「乗り換え案内すごろく」で日本縦断をしたら、2週間&10万円以上かかった

Googleマップ JR北海道より)

自由に外出することすらままならない昨今。「旅をしたい!」という切実な思いは叶えられず、ただふくらむばかりだ。

だが、旅には欠かせない「乗り換え案内」なるものがある。現在地と目的地を入れるだけで、たちどころに行き方を教えてくれる文明の利器だ。

Yahoo! JAPAN路線情報より)

思えば路線図はすごろくのマスのようで、桃太郎電鉄という先例もある。さらに「乗り換え案内×すごろく」を組み合わせたら、所要時間や旅費に一喜一憂するホントの旅気分が味わえて楽しいのではないだろうか。

ルールは以下の通り。

  1. サイコロを振って、出た目の数だけ駅を進める
  2. 降りたあとは乗ってきた電車には乗れず、次の電車に乗る
  3. 極力各駅停車に乗るが、乗り換え案内の選択肢にない場合は特急に乗ってOK

基本的にはこれだけ。対戦相手はいないが、「10日間で日本縦断できれば勝ち(ご褒美に2千円相当のものを食べる)、できなければ負け」とし、ゲーム性を加えていく。

大型テレビで勝手に旅気分

まず稚内からスタートし、ゴールの鹿児島をめざす。その前に、このおうちでの旅気分を増幅させる秘密兵器を紹介しよう。我が家の48型テレビ(オリオン電機製)である。


これにPCを接続し、クリエイティブコモンズの転載OKの画像と私ライターの辰井裕紀(@pega3)が一緒に写真を撮ることで、あたかもその場に行ったように写真に写してみせる。

Photo by Rsa

たとえばこんな感じで撮り、トリミングして調整すると下図のようになる。極めて原始的であるが、ちょっと楽しい。

電車の本数が少なすぎる北海道

さあ稚内駅から旅をスタートしよう。さっそくサイコロを振る。


5が出た。この場合5マス先の駅まで進めるので、稚内駅の5駅先の徳満駅まで進める。

さらに、乗り換え案内に出てきた所要時間と旅費を加算していく。すなわち、「実際にその場へ行く」以外はホントの旅をなぞっていくわけだ。

しかし、北海道の郊外はとにかく本数が少ない。一度電車が行ってしまったら、次が来るのは5時間後なのもザラだ。


2日間もかけて、美深まで来るのがやっとである。まだ道北だ。早くも「10日間にクリア」という目標に暗雲が立ちこめる。


Googleマップより)

ちなみに、一本の電車で来れば、本当は3時間足らずで稚内から美深までは来られる。


Googleマップより)

これほどまでに電車の本数が少ない。そんな地方の鉄道問題に直面しながらも、サイコロをどんどん振ってどうにか歩を進め、札幌まで来た。

札幌と言えば、やっぱりみそラーメンが名物だ。家にあったカップラーメンを小道具に使って、札幌へ来た気分に浸りたい。



カップめんでも、器に入れて具材を投じるとちょっとはサマになる。これで、例の48型テレビと画像を使って、行った気になろう。

Photo by zezebono

札幌名物のラーメン横丁をバックにめんをすすると、単なるカップラーメンでも少し楽しくなる。「僕は何をやっているんだろう」との一抹の悲しさは胸にしまって、先を急ごう。

そんなわけでまたサイコロを振っていく。旭川~札幌のあたりは電車の本数も多かったが、離れるたびに再び本数も少なくなるが、いよいよ北海道を抜けるときが来た。


Googleマップより)

津軽海峡超えは新幹線を使わざるを得ないため、運賃が7720円と跳ね上がった。北海道脱出に使ったお金は32770円である。高い!

すでに6日目に突入し、サイコロを振った回数は40回を超えた。「10日間以内に到着すれば勝ち」という目標にはすでにあきらめムードが漂ってきた。

青春18きっぷでの日本縦断であれば、5日あると余裕らしいが、今回の場合は「サイコロを振った分だけ進む」「着いたら、次の電車に乗る」というのが、大きく行く手を阻んでいる格好だ。

東北の道のりも長い

北海道の次は東北だが、ここもなかなかハードな旅程だ。必死で何度もサイコロを振り、歩を進めていく。


Googleマップより)

8日目でようやく松島に来た。例の48型テレビで、行った気持ちに浸ろう。

Photo by lienyuan lee

ただ、このへんで別の問題が浮かび上がってきた。あまりにも駅の数が多すぎて、すでにサイコロを振る回数は67回になった。ここまでで旅程の記録作業などを含めて、6時間も経過している。

こんな企画を考えた自分にジャーマンスープレックスをかましたい気持ちだが、後悔しながらも進もう。

首都圏はアッという間に通り過ぎる

9日目、いよいよ首都圏へ到達。

しかしここはアッという間に通り過ぎた。電車の運転間隔がとても短く、次の電車を待っても十分早く移動できたのだ。

北海道とのあまりの差に、「僕たち首都圏民は恵まれているなあ」と素朴に思った。

途中で湯河原駅にも着いたので、大型テレビとの合わせ技で温泉に入ろう。と言っても筆者の住むアパートにはお風呂がないため、足湯でガマンした。

Photo by Quercus acuta

湯河原の象徴である藤木川とともに、危ない野郎がバケツの足湯に浸かる様子だ。足を拭いてほどなく、また西をめざす。

10日以内のクリア目標、達成ならず

そしてサイコロを振って、東海道線を進んでいく。

10日目にさしかかり、ようやく大阪までたどり着いた。


Googleマップより)

着いたからには、大阪名物をベタに食したい。ちょうど冷凍たこ焼きがあったので、これを道頓堀の写真をバックに食べて旅気分に浸ろう。

自粛中でガラガラのいまとは違い、賑わっていたころの道頓堀をバックに、たこ焼きを食べる。この絵面の情けなさも相成って、なんだか泣きそうになってきた。

そして制限時間内の10日間では垂水駅(兵庫県)までしか進めず、あっさりと筆者は勝負に敗れたのである。


Googleマップより)

失意の11日目。この日は兵庫を抜けて、岡山、広島と中国地方を進む。


Googleマップより)

広島といえばやはりお好み焼きだ。今度は冷凍お好み焼きを用意して、広島のお好み焼き屋の画像をバックに食べてみよう。

Photo by melvil

と、こうなる。なんでお店の中でそんなケースで食べているんだと、店主からの怒号を浴びそうだが、ともあれ気持ちは盛り上がる。


Googleマップより)

いよいよ九州へ到達する

12日目、どうにか関門海峡を通過して九州に入る。ここで腹ごしらえだ。ちょうどカップちゃんぽんがあったので、北九州の風景をバックに昼ごはんにしよう。

Photo by Hide

ちゃんぽんは九州全土で愛されており、ここ北九州にも戸畑ちゃんぽんというご当地メニューがある。このちゃんぽんの見た目は戸畑ちゃんぽんと全く似ていないが、それはともかく食べ終わって先を急いだ。

この九州もけっこう長い道のりが残っている。

もはやサイコロを振る回数は200回を超え、プレー時間は15時間を超えてきた。

正直に言おう、一刻も早くこの企画を終わらせたい。

それにしても、小刻みに乗り降りしているため、在来線なのにお金がかかることこの上ない。現実の世界では、間違いなくやりたくない乗り方だ。

そして14日目に入り、ようやく……!

Yahoo! JAPAN路線情報より)


Googleマップより)

Photo by Jnn

名所の立神岩をバックに、ゴール!サイコロを振ること232回、足かけ3日間かけてようやく終点の枕崎駅にたどり着いた。

おそらく20時間近くかかったであろう。「終わった……!」と呟きつつ、枕にうつ伏せに突っ伏す。

そして冷蔵庫の1リットル100円のジュースを飲みながら、まるでホントに長旅を終えたような謎の達成感をしばらく感じていた。

巣ごもり中も、心は旅ができる

ちなみにここまでに支払った運賃は10万1270円。なお青春18きっぷの場合は1万2050円、新幹線をフル活用したルートでも6万2670円で済むと思うと、あまりにも不経済で効率の悪いルートだ。

とんでもない作業量だったため、諸々合っているかの確認はできていない。おそらくどこか間違っているであろうが、どうか参考程度で考えてほしい(快速などにしか乗れず駅を飛ばしている区間や一部徒歩区間の所もある)。

筆者としてはこの旅なりに一種のダイナミズムを味わえたのだが、「お前は何やってるんだ」としか思えなかった人もいて当然だろう、そんな方には「ごめんなさい」を贈る。

ともあれ巣ごもりの時間の中で、家にいながらにして旅をする。そんな遊び心だけは持ち続けようではないか。

著者 : 辰井裕紀

ライター、番組リサーチャー。卓球、競馬が好き。過去にケンミンSHOWなどを担当し、全国習慣ネタにそこそこくわしい。

Twitter: @pega3

<編集 池田繁孝(@shigetaka_1988)>