を知る通信をご覧のみなさま、はじめまして。ライターの少年B(@raira21)です。
そういえば本日、3月19日はミュージックの日だそうですね。わたしは音楽が好きなのですが、さいきんの人気のジャンルと言えばもちろんそう……
ラップですよね。
ラップバトルの番組はもちろん、ラップを題材にしたメディアミックス企画まで登場。ものすごい人気を博しています。そう、世はまさに大ラップ時代。老若男女……はさすがにちょっと言いすぎかもしれませんが、少なくともわたしの周囲の20代、30代の友人は、男女を問わずみんなラップに熱中している印象があります。
ラップって、めちゃめちゃカッコいいですよね。特に、あの言葉の言い回し。でも、じつはひとつだけ、ちょっと気になっていることがあるんです。
オヤジギャグとラップって似てません?
ラップのライムは韻を揃える「言葉遊び」のようなところがありますが、「韻を踏む」というと、わたしには思い当たるものがひとつあります。
それは、わたしが子どものころ、親父が言っていたダジャレです。「布団が吹っ飛んだ!」とか、「ダジャレを言うのは誰じゃ?」なんて、いわゆる「オヤジギャグ」ってやつですね。
韻を踏むという意味では、ラップもオヤジギャグもおなじはずです。でも、ラップはカッコいいし、オヤジギャグは寒い。これはいったいどうしてでしょうか。ラップにあって、オヤジギャグにないもの。それはトラックとリズム、そしてリリック(歌詞)のストーリーです。
じゃあ、つまんないオヤジギャグでも、曲として成立するようにリリックを考えて、ラップのトラックに乗せてクールに歌い上げればカッコよくなるんじゃないでしょうか。
申し遅れました、すっかり中年になった少年B(34歳)です。
そういえばわたしも34歳。ちょうどあの頃の親父とおなじくらいの年齢になりました。オヤジギャグを飛ばしまくってもおかしくないお年頃ですよね。
オヤジギャグをふんだんに取り入れたラップ曲を作ったら、オヤジギャグのダサさが勝つのか、ラップのカッコよさが勝つのか。そんなことを考えていたら、気になって気になって、夜も8時間しか眠れなくなってしまいました。
そこで、知人のラッパー・Xさんと、トラックメイカーのYさんにお願いをしてみました。プロのミュージシャンにいきなりわけのわからないお願いをしたので、ドン引かれるかなと思いましたが、なんと匿名を条件にこころよく引き受けてくれました。
深夜にもかかわらず、5分以内に返事をくれるXさん。頼もしすぎでは。
ラッパーのXさんにはダジャレをふんだんに使った作詞を、トラックメイカーのYさんには作曲をお願いしました。歌詞については親父が言っていたギャグをいくつかリクエストし、作曲に関してはおまかせでお願いをしました。プロのミュージシャンおふたりに全振りをして作ってもらったオヤジギャグラップ。いったいどんな曲になるのでしょうか……?
10日ほどでYさんからはトラックが、続いてXさんからトラックに合わせた歌詞が送られてきました。曲は最後に聴いていただきますが、笑っちゃうくらいカッコよかったです。やっぱり、ラップは裏切らない……!
しかし、唯一にして最大の問題はわたしの歌唱力です。
心配のあまり、Xさんからのメールに添付されていたボイスメモを聴きながら、家でひたすらラップの練習をしていました。パソコンに向かい、仕事をしながら延々とブツブツ言い続ける姿は、傍から見たらさぞあやしい人物だったことでしょう。ああ、一人暮らしでよかったなぁ。
いよいよ録音!いったいどんな曲が……?
依頼から約2週間が経った3月某日、Yさんの自宅に招かれました。Yさんはインディーズバンドのメンバーとして活躍しているほか、自分の家で録音をして楽曲を発表しているシンガーソングライターでもあります。いわゆる「宅録ミュージシャン」というやつです。
なんだこの箱は
Yさんの部屋に入ると、扉のついた謎の箱がありました。
録音をする際は近所迷惑にならないように、防音機能のあるこの箱の中に入って作業をするそうです。なんだか秘密基地みたいでわくわくしますね。すげぇぇぇぇぇー!!
ドアを開くと、中には吸音素材がぎっしり!
ひとり入るといっぱいになってしまう狭い空間ですが、中には吸音素材が張り巡らされ、パソコンとマイクがセッティングされています。
Yさんの曲はこの中で生まれているんですね……!いよいよレコーディング。気持ちが高まってきました。緊張します。
イスがお風呂用のものだったのは、じゃっかん気になりましたが……
さっそく、お邪魔しま~す!
緊張が表情に出ていました。
「それじゃあ行きますよ。3、2、1……スタート!」
外にいるYさんから、ヘッドホンを通じて指示が飛びます。うおお!やってやるぜぇぇぇぇ!!!
録音している最中はまったく気付かなかったのですが、あとから写真を見返してみたらめちゃめちゃノリノリでした。録音、ちょっと気恥ずかしいけどすごく楽しいですね。なんだかクセになりそうです……!
Yさんは外のパソコンで録音したボイスを切ったり貼ったり。曲としての形を整えていきます。
いよいよ完成!オヤジギャグラップ!
そして約2時間後……
ついに曲が完成しました。さっそく聴かせてもらうことに。
最高じゃん……!!
思わず、めちゃめちゃ笑顔がこぼれてしまいました。えっ、なにこれ。ほんとうにわたしなんですか。Yさんの手によって、「わたしの声」がしっかりした「ラップ」に形を変えました。
最後まで長々と引っ張ってしまいましたが、それではお聞きください。これが、プロのラッパーたちの手によって生み出された、オヤジギャグをふんだんに使ったラップです!
【歌詞】
布団が吹っ飛んじゃうぐらい
でかい蜘蛛 全くもう
公文 行くもんって言うも
うん、ここで踏むう◯こ
どーよ? する動揺?
On and on 尾根みてえなオネエの◯ロ
A4でえーよんでキレる江藤
Get on the mic 手荷物だけ手に持つ
エイ!と力んだエイがイエーイと言え
目も当てられないメモには
「減っちまったヘチマ」とWritten
離島行きたい気分な奇文
自分は しぶしぶ支部飛ぶ 渋谷は当分行けない
いっけない! 遅刻
新幹線で名古屋、愛知国
発車時刻まで数分 地獄
しごく身体 さぁ、これからだ
イエーとかヨーとかセイとかホーとか
家でのヨガ ◯的放射
イエーセッショー トゥザビッチョー
遺影 ◯生 床ビチョビチョ
ダジャレを言うのは誰じゃー?(俺じゃー!)
洒落伝わらず なる髑髏
ラップ、気持ちいい~!!
Xさんが曲として成立するようにリリックをまとめてくれたこともありますが、寒いオヤジギャグがちゃんとライムになりました。トラックにリズム、そしてリリックのストーリー。ラップにあって、オヤジギャグにない3つの要素を備えれば、ちゃんと「オヤジギャグもカッコいいラップになる」ということが証明されました。
あらためて考えてみたら「韻を踏むのはオヤジギャグもラップも一緒なのでは?」なんて、ふざけた疑問ですよね。プロとして活動しているXさんやYさんからしたら「お前ふざけんなよ!」って怒ってもいい話のはずです。
でも、おふたりはそんなわたしの疑問に正面から取り組んで、その上で最高にカッコよく曲を仕上げてくれました。そうか、わたしはラッパーのこういう姿勢が好きだったんだなぁ。うーん、やっぱりラップって、最高にクールでカッコいいですね!
<編集 池田繁孝(@shigetaka_1988)>