パチプロから会社コンサルへ 波乱万丈でたどり着いた、無駄を省いて仕事効率アップの「仕組み化」への道

伊藤陽介

「自分にはサラリーマンがまったく向いていなかった」

と赤裸々に語った、株式会社ビズヒッツの代表取締役・伊藤 陽介氏。アフィリエイト事業、SEOコンサルティングなどインターネットマーケティングに広く携わりながら、現在は『仕組み化』という、独自に編み出した仕事効率化のノウハウを活かし、企業のコンサルティング事業を始めています。

伊藤氏はフリーター時代、まったくの未経験から一念発起でパソコンを購入し、「パチスロについてブログを書いた」ことが起業のきっかけという、経営者としてはかなり異色の経歴の持ち主です。

ここに至るまでに一体、どんな出会い、どんな想いがあったのでしょうか?

これまでの人生について振り返っていただきながら、お話をお伺いしました。

 

3日でやめたライン工の仕事。サラリーマンになれなかった理由とは

よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

伊藤陽介

まずは、伊藤さんが起業したきっかけについて聞いても良いですか?

はい。僕の場合は起業というより、サラリーマンになれなかった、という表現の方が正しいと思います。学校を卒業して工場に務めたのですが、いわゆるライン工というもので。でも、3日で辞めちゃったんですよね。

3日!なかなかのスピード感(褒め言葉)ですね。続かなかった理由ってなんなんでしょうか?

人の言うことが聞けなかったんですよね。実際にやってみて、ライン工の仕事に興味がまったく湧かなかった。興味がないからモチベーションも上がらず、仕事を覚えることもできなくって。

そこからフラフラとフリーター生活が始まったわけですよ。

そんなドヤ顏で言われても。それで、何が転機となってインターネットの世界に飛び込むことになるんですか?

フリーターを続けていたある日、起業した友人の仕事を手伝うことになったのですが、約束の日になっても働いた分のお金が支払われなかったんです。

おやおや、まさかの友人の裏切りですか?

いえ、友人に発注していた元の会社の方が飛んでしまって、友人にも支払われなかったので仕方なかったんです。とはいえ、それで生活がめちゃくちゃ苦しくなりまして。持っていた現金も残りわずかで、今後の収入の見込みもない。そこで僕が何をしたかと言うと……

伊藤陽介

ヤケクソでパチンコ屋に飛び込んだんです。パチスロに懸けてみようかと。

あの、これ、経営者インタビューの企画なんですけど、その話の展開で大丈夫ですか?(笑)

ところがですね、ビギナーズラックなのか才能なのかわからないのですが、勝ちまして。その後もパチスロの研究を重ねて安定して勝てるようになり、いわゆるパチプロ状態で生活してたんですよ。食べるには困らないぐらい稼げてました。

ライン工と違い、パチスロに関しては努力ができたのですね。その生活が何歳ぐらいまで続いたのですが?

なんと29歳まで続きました。でも、30歳を目前にして、ふと人生について考えることになるんです。このままパチプロ生活をしていても将来はそんなに明るくないだろうな、と。資格もない、スキルもない、コネもない。

そこで、何も知識が無い状態でとりあえずパソコンを買ってみたんです。今から12年ぐらい前の話ですね。

12年前というと、日本で光通信が普及して爆発的にインターネットがブームになった時代ですね。

でも、パソコンを使ってどうやってお金を稼げば良いのか、当時はまったくわからなかったんですよね。稼ぐ方法を検索したら怪しい情報がいっぱい出てきて。とりあえず、情報商材とかも買ってみたんです。

その情報商材の内容が『あなたもブログを始めて情報商材を売れば儲かる』っていう内容の情報商材だったんですよ(笑)

ザ・情報商材ですね。これ以上ないぐらい、シンプルな情報商材ですわ。

当然、物販なんかの経験もないし、できることがほとんどない状態。ただし、パチスロの勝ち方だけは知っていたので、パチスロについてブログを書き始めたんです。それが人気になって、ブログランキングで1位になりましたよ。(笑) 1日2000人〜3000人の来訪者がいたんじゃないかな。

1位はすごい。ライン工は3日で辞めたのに、ブログを続けるのは面倒ではなかったのですか?

自分が好きなことや情熱を注げるものに関しては大丈夫だったんです。でも、そのブログではお金をほとんど稼ぐことは無かった。ブログ内でパチンコの勝ち方に関する情報商材を売ることもできたとは思うのですが。

パチスロの情報商材を始めたら、もう戻れなくなるだろうという予感がしてたんですよね。パチスロを辞めるためにインターネットを始めたのに、またパチスロをやるハメになるな、と。ただし、ブログを通じて知り合った人からアフィリエイトが儲かる、という話を聞き、それが転機になりました。

おお、ついに転機が訪れるわけですね!やっとインターネットビジネスへの道が拓けた!

 

稼ぐWebサイトの量産体制。役立つ情報の提供者へ

伊藤陽介

知人にアフィリエイトでどれくらい儲けているのかを聞いたら、月に100万円を超える稼ぎだって言うんですよ。じゃあ、僕もやってみようかと。

リエイトが儲かる、という話を聞き、それが転機になりました。

(伊藤さんの凄いところは、未知の領域でもまったく恐れないところだな。僕だったら怖くて無理。そんな素直にはできない。。。)

さてさて。アフィリエイトで稼ぐには、まずアクセスを稼ぐWebサイトを作らないといけないですよね。でも、最初は何もわからないので、とにかく数をこなそうと考えました。朝から晩までひたすらパソコンの前に座ってましたね。

今度はWebサイトをつくることに対して、伊藤さんの情熱に火がついたわけですね!

とはいえ、結婚とか転職とか車とか、需要があることはわかっていても、自分が詳しくないと記事が書けないじゃないですか。そこで思いついたのが、インタビュー記事をアップするサイト「みんなのインタビュー」を作ることだったんですよ。

インタビュー、ですか?

最初にインタビューをしたことは今でも覚えてます。結婚式の二次会幹事のスペシャリストという方がいたんですけど、ボイスレコーダーを持って会いに行って、車の中でインタビューを行いました。他にも引越し業者にインタビューしたり、その道のスペシャリスト達に会って話を聞くというのを繰り返したんです。

そうして得た情報をWebサイトに落とし込んでいくと、読者にとって役立つ情報が集まった魅力的なWebサイトができたんですよね。そこにSEOのテクニックとかも駆使して。

なるほど。インタビューをすることで、専門家の力を借りるという発想ですね。すごく参考になるコンテンツのつくりかたです。

SEOでどんなに人を集めても、役立つ情報がなければユーザーは納得しません。結果的に売り上げも伸びないんですよね。

何が当たる(人気が出る)かなんてわからなかったのですが、意外なジャンルのWebサイトが稼ぐこともあったりして面白かったです。あと、当時はyahoo!カテゴリに登録するだけでアクセスが集まる時代だったんですよ。登録させるのに審査があるのですが、そこは研究をしましたね。どういうつくりのサイトにすれば、yahoo!カテゴリに載るのかを熟知していました。

伊藤さんって、いったん情熱に火がつくと突き詰めるタイプの人ですよね。

自分には、このアフィリエイト事業がすごく合っていたんだと思います。興味もあるし、人の役に立つことをしている実感があって、ハマったというか。

やがて、ボイスレコーダーで録音した内容を近所のおばちゃんにテープ起こししてもらったり、パチプロ時代にできた友人にWebサイト制作を手伝ってもらったり、徐々に組織的な活動を行うようになりました。

おお。パチプロになった時はどうなることかと思いましたが、だんだんサクセスストーリーっぽい話になってきましたね(笑)

仕事を手伝ってもらっている内に、パチプロ仲間だった友人から『法人化しよう。俺たちならもっと稼げる。もっとすごいことができる。』って言われて。

あ、まさか、そうやって誕生したのが株式会社ウェブヒッツなんですか!?

そうなんです。

(涙)

……すごい成り立ちなんですね。なかなか無いタイプの起業だと思います。そのご友人とは今でも一緒に会社をやっているんですか?

いや、そこから色んなことがありまして(笑)

なるほどですね(察し)

法人化して1年後にはSEOコンサルティング事業もうまくいって、セミナーをやってほしいとか、そういう講演依頼もいただけるぐらい順調だったんです。ところがある日、googleの大きなアップデートがありまして、売り上げがガクッと落ち込んだんですよ。

ああ、例のアップデートですね。インターネットマーケティングをやっている方なら、誰しもが通る道。

そんな時、ふとした原体験から新しくやりたいことが見つかったんですよね。

自分の会社で学んだ環境づくりの大切さ。仕組み化コンサルティングの始まり

伊藤陽介

伊藤さんが新しくやりたくなったことって、どんなことなんですか?

はい。会社や組織の『仕組み化』と僕は呼んでいるのですが。

ほほう。仕組み化、ですか。システムっぽくてカッコいい名称ですね。

仕組み化の定義はとても広いのですが、一言で表すならば『人、モノ、時間、お金を潤滑に回すための環境づくり』ということなんです。とにかく仕事を効率的に回すために、大切な考え方だと思いまして。

例えば、仕組み化にはどんなことが含まれるんですか?

本当にミニマムなもので言えば、『会社で支給するパソコンのマウスをより機能的なものに変える』とか、そういうことも含まれます。僕の会社で行った仕組み化の例としては、『全員、出社せずにクラウドで働くようにした』というものがありますね。

なるほど!小さなことから大きなことまで、仕事を効率的に回すために会社の環境を変えるという発想ですね。

そうなんです。このアイディアのきっかけとなったのは自分の会社でした。朝、会社で雇っている人がまるで当然のように出社して、無言でパソコンの前に座り、作業を始める。無駄に会話が多いと作業効率が落ちるので、黙々と仕事をしてくれるのは社長としてはありがたいことなんですけど、『あれ?これ、家でやれば良くない?』って思ったんですよね。

そう言われてみるとそうですね。なんで出社しないといけないのか、よくわからないですよね。

通勤時間も無駄だし、全員在宅勤務で良いじゃんって。ファイルのやりとりもなくして、googleスプレッドシートで作業をクラウド化しました。そしたら、会社全体がすごくうまく回りだして。

それから、会社や組織の無駄だと思うことを見つけてなくす、働きかたや仕事のやり方を変える、ということに注力するようになりました。そのことを、とある経営者の前で話したら『…ちょっと、ウチの会社のことも見てくれない?』って。

ボランティアのつもりで、その方の会社に出向いたんです。社員達の作業の様子を見たり、環境について気がついたことを指摘したら『伊藤さん、これはすごいことだよ。』って言われまして(笑)

外部の人が見ると、なかなか気がつかないようなことにも気がつくかも知れませんね! 特に、伊藤さんみたいな異色の経歴だと、その感覚は鋭いのかも。

本当にボランティアのつもりだったので、これをサービス(事業)にしようとは思わなかったのですが、需要があるのならやってみようかと。現在までに7社ほど、コンサルのような形で仕組み化を行なっています。

実際にやってみて気がついたのですが、意外と大手の会社とかでも想像以上に効率化ができてなかったんですよ。いまだに分厚い紙のマニュアルとかを使っている会社とかもあるし、社員同士の連携がまったく取れてなかったり。

伊藤陽介

とある会社で、すごい効率的に作業をする方がいて。でも、隣の席で同じ作業をしている人はそのやり方ができてなかったんですね。『どうして隣の人にやり方を教えてあげないの?』と聞いたら、きょとんとした顔で。『ああ、組織だけど組織じゃないんだ』と思いましたね。

日本人は性格的にそうかも知れないですね。でしゃばりだと思われるのも嫌だし、とりあえず自分だけできていれば良いって考えの方が多そう。

教えなかった人の気持ちもわかるんですよ。歴史のある会社とかでは、なかなか若い人の意見が通らないこともあります。その会社に長くいる人は、新しいやり方に切り替えることに対して抵抗があるみたいで。でも、僕みたいな外部の人間がズバズバ言うことには価値があると思っていただけるようで。

傾向としては、WebとかIT系じゃない会社は特に仕組み化のやりがいがあるように感じています。とはいえ、この仕組み化コンサル事業もなかなかテクニックがいるな、と思っているんです。指摘し過ぎると本当に細いことにも口を出すことになるのですが、それが従業員の方のストレスになることもあり得ます。『鬱陶しい!』と思われたら、今度は僕の言うことを聞いてくれなくなる可能性もありますし。

そういうのは考えますよね。難しい場面、難しい会社も多そうです。

でも、伊藤さんのパワーでどんどん、変えていって欲しいです! 古くて大きい会社は特に! それが日本のためですから!

頑張ります!

最後に、これから起業する方や会社を経営する方に対してアドバイスがあればお願いします。

別に自分は成功者だと思っていないので、アドバイスできるようなことはないのですが、これまでの経験で一つだけ思っていることがあります。それはメリット、デメリットだけを考えて人と付き合うのは良くないということです。

と、言いますと?

損得だけの関係だと、自分の弱いところを見せた時に人は離れていってしまいます。だけど、常に順風満帆な人なんていないわけですから、ひたすら虚勢を張り続けなければいけなくなるんですよね。

そうじゃなくて、困っている時に損得抜きで助けてくれるような人と出会い、付き合っていく。当然、自分もそういう人間であり続けることが大切ですよね。

めちゃめちゃええ話や…… 勉強になりました。損得抜きで付き合ってもらえるような人間になれるよう、僕も頑張ります。

まとめ

とても波乱万丈な人生を送ってきた、伊藤さんだからこそたどり着いた仕組み化コンサルの道。伊藤さんの根本にある考え方は現代の情報化社会に非常にマッチしていると思いました。

ツールが変われば、効率的な仕事のやり方もどんどん変わる。古いやり方は捨てて、新しいことにチャレンジし続けなければ、生き残れないほど時代の流れは早くなっている

「自分は運が良かった。生まれた時代が少しズレるだけで、(インターネットがなければ)自分は生きていけなかったと思う」と語った伊藤さん。

そんな伊藤さんに「今後、目指すことは何ですか?」と聞くと

「恩返しがしたい」と答えてくださいました。

恩返し

会社は全てクラウド化し、今では一人で過ごすことになった伊藤さんの作業部屋の壁には、「恩返し」の文字が飾ってあります。

「googleのアップデートなどで会社が倒産しかけた時、たくさんの人に助けられた。自由奔放に育ててくれた両親にも感謝してるし、これからは人に対する恩返しを考えたいです。

と笑顔で話してくださいました。

サラリーマン不適合者で、異色の経歴となった伊藤さん。しかし、その人間性と情熱は「経営者として何が一番大切なのか」を私たちに教えてくれたように感じました。