厚さなんと6cm!上野の純喫茶「珈琲王城」の厚焼トーストで優雅なモーニング

移動の合間に仕事のメールを返し、食事をしながらSNSをチェックして、家事の合間に録画したニュース番組を倍速で見る……これが、私の日常。

仕事や家事に追われる日々を送っていると、「いかに効率的に時間を使うか?」が最優先事項になって頭も体も常にフル稼働、心が休まる暇がなくて、「ア゛ーーーーーーッッッッッ!!!!!!(白目)」ってなりませんか?私はなります。

遅ればせながら、「を知る通信」をご覧のみなさま、初めまして。ライターの中村と申します。ライター業のかたわら、レトロなお出かけスポットを紹介するWebマガジン「てくてくレトロ」を運営しています。

精神崩壊寸前で白目をむいてしまったとき、私は純喫茶に向かいます。私にとって、純喫茶は癒し。ささくれだった心をなだめてくれる、心のオアシス。せわしなく生きる人々に、ぜひ純喫茶の良さを知ってもらいたい……!

ということで今回は、雑誌や映画などのロケ地として使われることも多い、上野の有名純喫茶「珈琲王城」をご紹介。某テレビ番組でも紹介されたインパクト大なモーニング限定メニュー「厚焼きトースト」を食べてきました!

貴族のように優雅に過ごせる上野の純喫茶「珈琲王城」

上野の「珈琲王城」は、1975年に創業した老舗の純喫茶。散歩番組で取り上げられたり、雑誌やドラマ、映画のロケ地として使用されたりすることも多い、有名なお店です。

お店は、上野駅から御徒町駅方面に200mほどの場所にあります。上野マルイを右手に見ながら歩くこと約5分、お店に到着!

紫に白・黄色の文字が書かれた看板が、朝らしからぬミステリアスな雰囲気を醸し出していますね……。

レンガ造りの外観は、レトロな趣があって素敵です。外の明るさに対し、薄暗くてムーディーな店内……。扉を一枚隔てた先には、まるで異世界が広がっているかのよう。

では、いざ入店!!

店内は、暖色の照明で落ち着いた雰囲気。中央にあるシャンデリアが、くつろぐ人々を優しく照らしています。

シャンデリアの周りには、彫刻をイメージした美しくて繊細な装飾がほどこされています。思わずうっとりと眺めてしまう……。

珈琲王城が創業した当時の日本は、イギリスやフランスの貴族の暮らしに憧れる人が多くいた時代。シャンデリアやステンドグラスなど、城をイメージした内装の喫茶店が数多く存在していたそうです。

「純喫茶ってステンドグラスやシャンデリアがあるお店が多いな〜なんでだろう?」と思ってたんですが、そういう理由だったんですね!

シャンデリアに彫刻のような装飾、布張りのゴージャスなソファー。「珈琲王城」の内装も、西洋の城をモチーフにしています。「お客様に貴族のように、優雅に過ごしていただきたい」という思いがあるそうです。

クリームソーダ・ナポリタンなど王道メニューのほか新感覚の薬膳メニューも

スイーツ系メニューの中で人気なのは、クリームソーダやチョコレートパフェ。食事系メニューでは、ナポリタンとミートソーススパゲティーが人気とのこと。ザ・純喫茶!な王道メニューがやはり人気なんですね。

また、漢方専門の診療所「天心堂診療所」が運営するWebメディア「かんぽう×美」とコラボレーションした薬膳メニューもあります。健康・美容意識が高い方に特に人気なんだとか!

薬膳メニューは、現在のオーナーに代替わりしてから新しく生まれたもの。昔ながらの王道の味を楽しめる一方で、新感覚のメニューも味わえるとなると、何度も足を運んで色々なメニューを制覇したくなりますね!

外はカリッと中はフワフワ!モーニング限定「厚焼トースト」

さて、今回食べるのは、モーニングメニューの「厚焼きトースト」。厚焼きトーストは、8:00〜11:00のモーニングの時間帯にしか食べられない限定メニューです。
以前、午後の時間帯に来店した時には別のメニューをいただいたのですが、その時からメニューを見て気になっていたんです!

トーストにボイルドエッグ、ドリンクがついて700円(税込)。11時以降に提供されている普通の厚さのバタートーストが400円、珈琲が600円なので、かなりお得ですね!

ちなみに、厚焼きより少し薄め(と言っても十分厚いのですが)の普通焼のトーストセットが650円(税込)。その差50円……ならば厚焼きでしょ!!!ということで、迷わず厚焼きをオーダーしました。

わくわくしながら待つこと十数分……トーストセットが運ばれてきました!

え、トースト大きすぎない??いや、コーヒーカップが小さいのか???? と一瞬錯乱。写真で見ると余計、縮尺がおかしく見えますね……トーストだけ拡大加工したみたい……(もちろん無加工ですよ)。

5〜6cmほどはあるこちらのトースト。とはいえ、何センチと言われてもサイズ感がいまいちピンとこないと思います。

わかりやすくお伝えするのならば、国語辞典と同じくらいの厚さです。

サイズ感、伝わりますでしょうか

※イメージ画像

でも、何でこんなに分厚くしたの?とお店の方に聞いてみたところ、「このくらい厚い方が、色んな味や食感を楽しんでいただけるんですよ!」とのこと。

トーストに使用しているパンは、数多くの有名店にパンを卸している「サンワローラン」のもので、もっちりと甘いのが特徴。厚切りにしてトーストすることで、外側はカリっと香ばしく、中心部はふわふわもちもち……と、2通りの食感が味わえます。

さらに、厚みがあることでバターが染み込んだ層とパンそのものの味が楽しめる層、それぞれの味の違いも楽しめるそう。なるほど、「色んな味や食感を楽しめる」ってそういうことか!

ちなみにこちらのトースト、バターを二度塗りしているそう。一度焼いたあとにバターを塗り、さらに焼いて最後にバターを塗って完成。手が込んでいる……!

厚焼きトーストで最高な一日のスタートを!

いざ実食!

バターがたっぷり染み込んだ層をほおばり噛み締めると、パンからじゅわりと染み出したバターの旨味が、口の中いっぱいに広がります。パンの甘みとバターの程よい塩気が混ざり合って、たまらないおいしさ……!

一見ボリュームがありますが、ふわりと軽い食感なので、女性でも問題なく食べ切れる量だと思います。

ボイルドエッグは固茹ででした。ゆで卵って普段はあまり食べないのですが、たまに食べるとおいしいんだよな〜。シンプル・イズ・ベスト。

珈琲はマンデリンベースのブレンド豆を使用。酸味がほぼなくコクがあり、単体で飲んでもおいしく、食事と合わせるとお互いを高め合うような味わいが特徴だそう。
個人的に酸味があまり強くない珈琲の方が好きなので、こちらの珈琲はとても好みの味でした!

シャンデリアの灯りを受けてキラキラと輝く、銀製のシュガーポットとミルクポット。創業時から使っているもので、店員さんが日々磨き上げているそう。持ち手や脚にも細かい装飾がほどこされていて美しい……!

店内の照明も、花びらのようなデザインでかわいい。ゆったりくつろげる空間で、優雅にモーニング……。一日のスタートとしては最高すぎる!

赤字続きだった10年前……Instagramやロケ地提供により客足が回復

創業から約45年。現在お店を運営されている3代目オーナーに、創業当時〜現在に至るまでのお店の歴史を教えていただきました。

Kōyō Ishikawa – 「石川光陽写真展図録」『ウィキメディア・コモンズ』より

当時の上野駅は、東北から都市部への就職を目的に上京する人が利用する「集団就職列車」の終着駅が設けられていたことから「北の玄関口」と呼ばれていて、多くの人が利用しているターミナル駅でした。

オーナー:「当時は電車の接続も良くなくて、『乗り換えの電車が来るまで1時間以上もある』なんてこともあったみたいで、時間をつぶすために喫茶店を利用する方が多かったんです。携帯電話もない時代だったから、待ち合わせをする時にもよく使われていました」

駅を利用する人々の需要に応えるように、上野には次々と喫茶店がオープン。珈琲王城も、そのうちの一軒でした。

しかし、電車のダイヤ整備や携帯電話の登場によって、従来喫茶店に求められていた「時間つぶし」「待ち合わせ」といったニーズがなくなっていくとともに、多くの喫茶店が閉業に追い込まれたのです。

「珈琲王城」も、現オーナーがお店を継いだ約10年前にはかなり厳しい経営状態だったそう。
ですが近年、昔懐かしい雰囲気を味わえる純喫茶が「逆に新鮮!」と若い方を中心に注目が高まり、徐々に客足も回復していきました。

オーナー:「最近は、Instagramを見て来店してくださる方が多いです。ドラマや映画、雑誌のロケ地として使っていただくことも増えたおかげで、ファンの方が来店してくださることも多いんですよ」

撮影だけでなく、プライベートで「珈琲王城」を利用している芸能人の方もいるのだとか。よく来店するある芸人さんは、お気に入りの店としてテレビでも紹介してくれたそうです。

記事内に具体的な名前は出せませんが、珈琲王城のInstagramには「掲載情報」として、過去に撮影で訪れた芸能人の方が紹介されています。おいしそうなお料理の写真もたくさん投稿されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね!

珈琲王城の「変わらないこと」へのこだわり

若い方の来店が増えている一方で、昔からのお客様にも「変わらない珈琲王城を満喫していただきたい」という思いのもと、創業当初からメニューや内装はほとんど変えていません。

オーナー:「数十年ぶりに来店したお客様に『変わってないね』と喜んでいただけるのが、嬉しくて。それに、幼い頃から父に連れられてよく店に来ていて、思い出が詰まった場所だから変えたくない、という思いもあります。自分はオーナーではありますが、この店のファンでもあるんです」

お客様のためにも、そして自分のためにも「変わらないこと」へこだわりを持っている、とオーナーは語ります。

オーナー:「今って、いかに効率的に生きるかが重視されている時代ですよね。そういった時代の流れに疲れてしまった若い方に、うちのような純喫茶がウケているんじゃないかな、と。これからも『変わらないこと』にこだわりを持って、店を守っていきたいと思います」

コンビニでも淹れたての珈琲が飲める時代に、あえて純喫茶に通う理由。それは、レトロ“風”ではない、本物を感じられる空間で、効率や合理性を度外視してゆったりとくつろげることに、価値を感じているから。

せかせかと生きる毎日に疲れてしまったら、ちょっとだけ早起きをして、上野に向かってみませんか?優雅な空間で分厚いトーストをほおばれば、凝り固まった心もゆるむはず。

「珈琲王城」は、いつだって変わらない姿で、私たちのことを待ってくれています。

■「珈琲王城」店舗情報
住所:東京都台東区上野6-8-15
電話:03-3832-2863
営業時間:平日・土日祝日ともに8:00〜21:30
定休日:なし

■公式ページ
Facebook:https://www.facebook.com/coffeeoujyou/
Instagram:https://www.instagram.com/coffeeoujyou/

※この記事は新型コロナウイルス流行前に取材を行ったものです。
※本記事に記載の内容は取材時点の情報です。最新情報は店舗へご確認ください。

著者 : 中村 英里

浅草出身のフリーライター。下町、純喫茶などレトロなものが好き。おさんぽWebマガジン「てくてくレトロ」管理人。

Twitter: @2erire7
Blog: 「てくてくレトロ」

<編集 池田繁孝(@shigetaka_1988)>