プラモデル、作ってますか。「昔作ったな〜」とか「ミニ四駆なら……」という人は多いかもしれませんが、あなたが成長しているのと同様、プラモデルだって成長しているんですよ。
あらゆるジャンルのプラモデルにも新製品があるわけですが、今日皆さんに声を大にしてオススメしたいのが「タミヤのバイクモデル」。こんなに楽しくて、こんなにかっこよく仕上がるプラモはそうそうない。だから組まなきゃ損なんですよ!
スケールモデルも怖くない!タミヤのバイクモデルがすごいワケ
実在のメカを小さくしたプラモデルは「スケールモデル」と呼ばれます。接着剤で貼って、色を塗って、緊張感とともに仕上げなきゃいけない……なんだか怖い!と思っている人が多い印象ですが、これ、フレームをグリーンに塗った以外はほぼハコから出したまま組んだだけなのです。要は「ただ組んだだけ」でここまでイケてるスーパーマシンが手に入っちゃうということ。
このキットはタミヤの「1/12 オートバイシリーズ 1/12 カワサキ Ninja H2 CARBON」。
タミヤのバイクモデルは「基本的な色分けがパーツ状態で完了している/各部の質感が最初から作り分けられている/精度が高いので組みづらいところやグラグラするところがない」と3拍子揃っているのがエラい。
とくに「複雑な構造を精密なパーツで表現しているのに、どこも迷わずにカッチリと組み上げられる」というのはタミヤというメーカーの素晴らしいところで、塗装や削り出しといった難しい作業に疎くても、ただ無心でパーツを組み立てていくという愉悦がここにあるのです。
硬質なイラストにツインスターのメーカーロゴ。タミヤのプラモのパッケージには今も昔も変わらぬ宝物感があります。まずはこれを手に入れて、箱の中身を見てみることとしましょう。
プラモデルは組んだら無くなっちゃう!?組む前に眺めておけ!
組み立てられていないプラモデルのパーツというのは、どうしてこんなにキレイなんでしょうね。不思議なもので、プラモデルが完成すると最初にハコを開けたときのあの美しい光景はなくなってしまいます。
なので、まずキットを買ったら組み立てられる前の状態をじっくり眺めておきましょう。説明書と一緒に「ここはどこに収まるんだろう?」と想像しながら見ておくことで、製作時に迷子になりづらいという効果もあります。ドライブの前に地図をざっくり眺めておくのと同じですね。
カウルやタンクを構成するパーツはメタリックな粒子の入ったブラック。この時点で「え、塗装しなくてもギラギラしたパーツならそのままでいいじゃん!」とバンザイしましょう。
バイクの心臓部であるエンジンやフレームを構成するパーツはシルバーのプラスチックです。
エンジン以外の内部メカやホイールはしっとりとしたブラック。ハンドルやブレーキレバーの造形を見ると「こんなに精密なの!?」と驚くかもしれません。
排気管はクロームメッキでギラリと光ります。接着するときはノリシロのメッキをカッターでコリコリ剥がしてから接着剤を塗りましょうね……。
灯火類やウインドスクリーンはもちろん透明なパーツ!美しく透き通っていて、表面の歪みもいっさいないのが本当にすごいことなんです!
ここまででプラスチックの色はじつに5色。黒いパーツは表面加工によってパーツごとのツヤのあり/なしもコントロールされています。「パーツ状態で色分け済み」のロボットプラモはたくさんありますが、タミヤのバイクモデルはそれらに負けず劣らずの仕様になっています。これって、「色を塗って仕上げる人だけではなく、そのまま組み立ててカタチを楽しむ人のことも考えてますよ!」というメッセージだと思うのです。
さらにバイクモデルの楽しいところは軟質素材でできたホースやチューブ、タイヤ、メッシュにスプリングにビス……と、他のジャンルではなかなか見ない異素材が入っていること!5色のプラスチックに忍び込むリアルな異素材たちが、さまざまなツヤの違いで精密感をより一層盛り上げてくれます。さあ、これを組み上げてみますよ!
組む工程のすべてが最後までハイテンション!
パーツの合わせ目を消したり塗装したりという本格的なプラモ作りをしようとすると、説明書の順番では作業を進められない場合があります(これってプラモデルの不思議なところなのです……)が、色を塗らないで組むぞ!と決めると説明書に書いてあるとおりに手を動かしていけば必ずゴールにたどり着けます。
バイクという機械は、基本的にすべてのパーツが完成した後も眺められる構造になっています。クルマや飛行機は外装を開けないとエンジンが見えませんし、前後輪が左右から丸見え、というメカもそうそうありません。
接着するときは接着剤の跡がなるべく目立たないよう、「タミヤセメント(流し込みタイプ)速乾」を使いましょう。
プラモ用の接着剤は「塗ってからパーツを合わせて乾燥するまで待つ」というのが昔の常識でしたが、現在は「パーツを合わせておいてから接着剤をチョンと流すと、あっという間にくっついている」という魔法のような特性を持ったものが売られています。
このバイクの最大のキャッチーなカラーであるフレームのメタリックグリーンはパーツ状態で再現されていません。冒頭で書いたとおり、ここだけは説明書の指示どおりに塗装します。シルバーの缶スプレーを吹いてから、クリアーグリーンの缶スプレーを吹きます。
手元に筆やちょっとした塗料を用意してもいいよ!という人は写真のように細部を塗り分けてもOK。組み上げてニマニマするのが目的ですから、「やりたいこと/できそうなこと」だけをやるのが肝心です。面倒だな!と思ったらその工程はスキップしちゃいましょう。
エンジンはパーツを貼り合わせただけでこの凝縮感!このバイクの機能的な特徴でもあるスーパーチャージャーは赤く塗るとアクセントになりそうなのでこちらも缶スプレーでプシュッと塗っておきましたが、完成したら無理やり覗き込まないと見えません。たまたま次に作るプラモが赤いぞ、みたいな人は赤いスプレーを買ってトライしてみましょう。
個人的にバイクモデルを作っていていちばん盛り上がるのが「パーツとパーツをビスで留めている瞬間」。これは接着が難しい場所でも確実に固定できるようにし、全体の強度を高めるという工夫から取り入れられているお作法で、キットに同梱された精密ドライバーで小さなビスをクルクルと回していると、まるで本物のメカを組み立てているような気分になります。
さあ、だんだんバイクらしいカタチになってきましたね。ここからラストスパートです。
これがあると捗る!初めてのプラモでもオススメの「チョイ足しツール」
プラモには専門の道具がいっぱいあって、どれが本当に必要かを判断するのはかなり悩ましい問題です。ここではこのモデルを作るときにオススメしたいふたつのアイテムを紹介しますよ!
まずはゼブラ社の「マッキー ペイントマーカー 銀」です。ただのマッキーと侮るなかれ、この「ペイントマーカー」はとても細かい銀の粒子がプラスチックの表面にもビシッと塗れるスグレモノ。ホイールやチェーン、細かく飛び出たビスの頭の彫刻などにちょんちょんと塗るだけで「金属じゃん!」と声が出そうになるほど素晴らしい質感が得られます。
そもそも「立体物に色を塗る」という行為、図画工作の授業以外ではやる機会少ないですよね。とくに「色を塗ったら違う素材に化けた!」というのはプラモの塗装のいちばん楽しいところですから、それを体験してみるファーストステップとしてこのマッキーペイントマーカーはほんとにオススメです。
もうひとつがセメダイン社の「模型用 ハイグレード」。セメダインと聞くとニオイのきつい有機溶剤系の接着剤を思い出すかもしれませんが、こちらは水性で無臭。メッキパーツや透明パーツをいっさい曇らせずに接着することができ、はみ出しても水を含ませたティッシュや綿棒でサッと拭けばいっさい跡が残りません。クリーンな仕上がりを求めるなら絶対に使うべき最高の相棒ですから、ぜひ手に入れてください。
メッキパーツと透明パーツが複雑に組み合わさったリアの灯火類もご覧のとおり美しく仕上がっております。ストップランプやウインカーは本来色が付いているはずですが、後ろから見なければ誰も怒りませんので大丈夫。バイク、完成したら横向きに飾るでしょ?
完成したら、ライダーも置いてみよう!そして……次はどうする?
ちょこちょこと作業して、実質3日程度でH2 CARBONが完成しました。見てください。これ、本当に説明書の言うとおりに組み上げただけなんですよ。
黒とメタリックブラック、シルバーとメッキシルバーの対比がそれぞれ鮮やかに本物らしさを演出してくれています。自分で塗ったメタリックグリーンのフレームが「間違いなく自分が作ったものだ!」という自信を与えてくれるのも嬉しいですね。
ミラーやKawasakiのロゴはメタルインレット(極薄の金属製シール)で再現されています。メーターやタンク、ホイールに入っているグリーンのラインは水転写デカールで用意されていますが、これは少しだけ貼るのが難しいポイント。「できそうなところはやってみよう!」の精神で試してみてください。万が一うまくいかないくても「オレのマシンはこうなの!」と決めてから次のプラモを作ればOKです。
さて、このバイクがいきなり10倍かっこよくなってしまうちょっとした飾り方を最後に書いておきますね。
それは、同じスケールの人間を横に置くこと。タミヤからは「1/12 ストリートライダー」というプラモデルが発売されています(写真は筆者が筆で塗装したもの。塗る前は真っ白ですが、彫刻として素晴らしい完成度なので白いまま置いても100%カッコいいので安心してください)。
コワモテのおじさんはちょっと……という場合は市販のアクションフィギュア(全高12〜14cmくらいのもの)を飾るのもGOODです。自分が愛情込めて作ったプラモがひとりぼっちではなく、誰かの操るマシンに変貌する瞬間。不思議なことに、そこにただバイクがあるのではなく、人がいて、風が吹いて、道路や街路樹が見えてくるかのような気持ちになるはずです。
タミヤのバイクモデルのなかでも比較的新しい製品は、ここで紹介したように「質感と組みやすさ」が高次元で融合した万人にオススメできるアイテムばかり。ただ組むだけでもバイクの構造が指先から脳にグワーッとインストールされて、部屋のインテリアとしても上質な佇まいを見せてくれます。最新作「1/12 Honda CBR1000RR-R FIREBLADE SP」や「1/12 ヤマハ YZF-R1M 」も同じように楽しめるはずですから、好きなカタチのものを手に取ってスケールモデルの世界に飛び込んでみてください。
大事なのは「できること/できそうなこと」だけをやってみて、ただひたすらにそのプラモが組み上がっていくさまを楽しむこと。あなたのプラモはあなただけのものですから、カタチになったぞ!というすごく原始的な喜びをきっかけに、この遊びのおもしろいところを味わってみてほしいのです。みなさんも、ぜひ!
<編集 池田繁孝(@shigetaka_1988)>