「漫画家は儲かる?」ベテラン漫画家『まいっちんぐマチコ先生』えびはら武司先生に当時の収入をズバリ聞いてみた!

「一発あたれば大きい」

漫画家という職業に関して、そんなイメージを持ったことはありませんか?

漫画家を目指し、やっとの想いでデビューしたとしても、ヒット作が出せなければその存在は世間には認知されません。しかし、収入に関してはどうなのでしょうか?

漫画家の収入ってどれくらい? 月収は? 年収は?ヒット作が出せなくても食べていけるの? その場合はどうやってお金を稼いでいる?
もしもヒットするとどうなるの!?

一般的な興味として、すごく気になる話ですよね!

今回、1980年代『まいっちんぐマチコ先生』の大ヒットで知られるベテラン漫画家のえびはら武司先生にお越しいただき、お話をしていただける機会をいただけました。

先生には当時のことを振り返っていただきながら、漫画家という職業の収入について詳しくお聞きしてみたいと思います!

漫画家の収入はどうやって決まるの?

-いきなり生々しい話なんですけど、漫画家の収入ってどうやって決まるんですか?

えびはら先生:漫画家は状況に応じて色んな収入があるんだけど、やはり主な収入といえば「原稿料」と「コミックスの印税」なんだよね。
「原稿料」は描いた漫画1ページあたりに対していくら、というページ単価で決まる。このページ単価は会社(出版社)によって違うんですよ。『まいっちんぐマチコ先生』は『少年チャレンジ』という学研(学習研究社)から発行していた少年漫画誌に掲載されていたんです。

-ダメ元で聞きますが、『まいっちんぐマチコ先生』が連載されていた時に支払われていたページ単価って、教えてもらえたり……?

えびはら先生:連載当初は1ページ5,000円だったよ。

-すんなり答えてくれた! 1ページ5,000円ですか!? ということは……

えびはら先生:連載開始時は16ページ描かせてもらっていたから、月に8万円。少年チャレンジは月刊誌だったので月収8万円という感じですかね。

-月収8万円だと、流石に安いなって思っちゃいますね。

えびはら先生:漫画家は売れなければ収入はサラリーマン以下だね(笑) でも、僕はお金に不満はなかった。自分が好きな漫画を描いてお金をいただけるなら、という感覚で。
余談だけど、手塚治虫先生もそういうお金に関しては無頓着な方だったようで、ギャラの交渉とかあまりしなかったみたいなんですよ。だから、もしかしたら当時の漫画家たちは「手塚先生があの原稿料なのに……」という漫画界のレジェンドがつくってしまった業界の基準に苦しんだこともあったのかも(笑)

-それはキツイですね(笑) ちなみに最初に決めた原稿料、ページ単価は上がったりするんですか?

えびはら先生:それも会社によると思いますが、基本的には新人ならいくら、何年間続けて描いいたらいくら、と、だいたい相場は決まっている。

当然、人気が出れば原稿料も上がるし、漫画家は自分で交渉もできるんですよ。でも、原稿料が上がるというよりも、ページ数が増えて収入が増えるイメージかなぁ。『まいっちんぐマチコ先生』はありがたいことに、連載してすぐに人気が出てページ数が16ページから24ページ、32ページと増えていって。32ページの頃にはページ単価が8,000円に上がっていたね。

-ということは月収25万6,000円になったんですね!?

えびはら先生:計算早いね(笑) さらに、少年チャレンジは月刊だったのが隔週に変わったんだよ。つまり月に64ページ描いていたから……

-月収50万円以上!! 一気にサラリーマンの平均を抜きましたね。

えびはら先生:その原稿料に加えて、「コミックスの印税」が入ってくる。当時はコミックスが1冊280円の時代だったんだけど、それでも1年で300万円以上は入ってきてたかな。

-原稿料とコミックスの印税を合わせれば、年収900万円〜1000万円!? ヒット作が生まれると一気に高収入になりますね。それが漫画家なんですね〜

えびはら先生:でも、連載が終わると一気に無職になる(笑) ただ、僕は『まいっちんぐマチコ先生』の連載が終わった時はホッとしたんだ。
それまでとにかく忙しかったし、お金を使う暇もなかったからね。ありがたいことに、連載が終わったという話を聞いてすぐに色んな出版社が僕に声をかけてくれたりもしたけど、貯金もあったし1年ぐらいはゆっくり考えようと思って。リフレッシュ期間にしましたね。

-連載が終わり、リフレッシュ期間が終わった後の収入ってどんな感じでしたか?

えびはら先生:僕の場合は単発で漫画を描いてくれ、という依頼を受けたり、カット(イラスト)の仕事をやったり。名前が売れたので仕事には困りませんでしたね。
コミックスの印税も含めると、連載がない時にも年収500万円はあったかな。カットの仕事ってすごくわりが良いんですよ。ストーリーとか考える必要ないし。

-連載がなくても500万円はすごいですね。

えびはら先生:いざとなれば、どこでも漫画を描けるという自信があったね。

-ちなみに、画材とかトーンとかを買うお金は支出になりますよね。これが意外と高かったりしないのですか?

えびはら先生:いや、画材とかトーンはせいぜい数千円とかで買えるんですよ。紙とペンとインクさえあれば商売ができる。漫画家って職業は元手がいらない(笑)

アニメ化されても儲からない!?漫画家にとっておいしい意外な収入とは

-原稿料や印税以外の収入についてはどうでしょうか? 『まいっちんぐマチコ先生』はアニメ化されていますが、その版権収入がものすごいとか!?

えびはら先生:そういうイメージがあるかもだけど、実はアニメの版権収入ってそこまで高くないんですよ。僕の場合は1話放映につき数万円程度。1クール終わって入ってきたお金が60万円ぐらいだったかな。

-アニメは1話放映で数万円? 想像していたより、ずっと安いですね。原作者なのに……

えびはら先生:アニメ制作ってすごいお金かかるから、なかなか潤沢にはいかないみたいですね。でも、コミックスの宣伝材料になるのが大きいので、漫画家にとってアニメ化は嬉しいんですよ。

-グッズとかはどうですか? アニメ化のおかげでグッズが売れたりとか…

えびはら先生:グッズもそんなには売れないかな。でも、LINEスタンプは出してみたけど(笑)

-LINEスタンプ欲しい! ところで、その他にえびはら先生の意外な収入ってありましたか?

えびはら先生:実は『まいっちんぐマチコ先生』がパチンコ台になったことがあったんだけど、それがものすごい儲かった。
パチンコ台って一台につき数十万円とかで売れるらしいんだけど、僕はその時の版権収入で1,200万円ぐらい貰えたんだよね。パチンコ台のためにイラストを描き下ろしたり、仕事もしたけどね。

-1200万円!? めっちゃくちゃ夢あるじゃないですか。パチンコってすごい。

えびはら先生:さらに裏話だけど、ちょうどその頃にミ◯ス◯ポ◯ス(某有名テレビ番組)のパンチラ表現が社会的に問題になったことがあって。
パチンコ台の方にも規制が掛かったことがあったんですよ。その影響で『まいっちんぐマチコ先生』のパチンコ台の出荷台数もかなり減らされて8,000台ぐらいになって(笑) あれがなければ、もっと儲かったかもなぁ……

-そんなことが… でも、8,000台で1,200万円ですもんね。漫画とパチンコといえば、原哲夫先生の『北斗の拳』のパチンコ台も凄まじいヒットをしていますが

えびはら先生:相当、儲けてるだろうね(笑)

-本当に夢あるなぁ、漫画家。

売れない漫画家はどうなるの?食べていける漫画家の目安は?

-でも実際問題、売れない漫画家さんもいらっしゃいますよね?

えびはら先生:めちゃくちゃいますね。僕の感覚ですが、漫画家志望の人間が100人いたとしたら、実際に漫画家として成功を収めるのは1人か2人。ただ、そこからカット屋(イラストを主な仕事にする)として生き残る人間は10人ぐらいはいる。カット屋でも食べていくには十分な収入は得られると思います。

-食べていける漫画家の基準というか、目安ってなんでしょうか?

えびはら先生:まぁ、それは同年代のサラリーマンと同じぐらいの収入を得ていられるか、でしょうね。やはりそのためには連載を持たないといけない。とにかく名前を売るまでが勝負だと思います。名前が売れれば、連載が無くなったとしても生きていける。食べていける漫画家ってのはそういうことでしょうね。

-なるほどですね。ちなみにえびはら先生は漫画家に向いてる人っていうのはどういう人だと思いますか?

えびはら先生:言っちゃ悪いけど、漫画家は完全に向き不向きがあると思う。自分が描いた漫画を出版社に持ち込んだとして、それがずっとボツになり続けたら半年でだいたいの人は諦める。
それはスジが悪いってことだからね。背景はすごく上手いけど、キャラクターが描けないとか。キャラクターのアイディアが出せない、とかね。そういえば以前、キャラクターが描けないから、いっそのことキャラクターを描かずに背景だけで漫画を描いた人がいたなぁ(笑)

まぁ、漫画家に向いてる人っていうのを強いて挙げるとしたら「描くスピードが早い人」ですかね。高いクオリティの絵を早く描ける人。スピードが重要視される世界だからね。
それと、「チマチマと細かいことを考えない人」かな。これも手塚治虫先生のエピソードだけど、明日までに30ページ仕上げなきゃいけない、という状況でも観たい映画があれば観るような人だったらしい。やっぱり、みんなと同じことを考えていちゃ面白い漫画は描けないということなんでしょうね。

-漫画業界にまつわる貴重なお話、ありがとうございました!非常に参考になりました!

まとめ

「一発あたれば大きい」

収入に関して言えば、漫画家とはその言葉通りの職業だと言えるのではないでしょうか。

えびはら先生のお話にもありましたが、「原稿料」と「コミックスの印税」が主な収入になるため、売れなければ収入はサラリーマン以下だし、売れる漫画家は志望者全体の1%〜2%とのこと。ただし、一度名前を売ってしまえば、安定した収入を得ることも難しくはないようです。

現代においては、Webに自分で描いた漫画を公開してSNSなどを利用して広めるといった手法で売れる漫画家のモデルケースも登場していますし、チャンスは多くなっているみたいですね!

本当に面白い漫画が描ける自信がある方、ぜひとも夢のある漫画家という職業に挑戦してみてはいかがでしょうか。

~~基本情報~~
えびはら武司:1954年6月5日生まれ、日本を代表する売れっこ漫画家
代表作『まいっちんぐマチコ先生』は連載開始から、30年以上経った今でも舞台化されるなど、時代を超えて多くの人に愛されている。
公式サイト:『まいっちんぐマチコ先生』

<取材/文 竹内紳也>